拳を固めてサワディカップ24-1

帰国して休む間もなく1月21日に沖縄の試合に出場するマナットとセコンドのサイトーンを迎えに福岡空港へ。自宅で休ませた後、福岡のホテルにチェックインさせる。一泊した後、沖縄行きの飛行機へ送り出した。

試合は1ラウンド開始早々のKO負け。空港へ迎えに行くと、被弾も少なかったせいか、ダメージもなくひと安心。友人のタイ人、ソムさんの店へ食事に連れていき、翌朝一番で福岡空港へ送り届けた。マナットもサイトーンも、あまりの不甲斐ない結果に、終始気まずそうにしょげかえっていた。

ひと息ついて、フィリピンのマッチメイクに取り掛かるが、これが厄介だった。

アルベルト・フランシスコ対ヤン・チェンチェンの試合は、ヤンのキャリア不足を懸念するエロルデ・プロモーションに頼み込んで何とかまとまったが、クリスチャン・アラネタ対ゴンファーの契約がまとまらない。

オメガ・プロモーションのラルフ氏曰く、もうすでにサインの入った契約書を受け取っているという。驚いて、ゴンファー側のダイヤモンド・プロモーションに連絡を取る。担当のスィアタン氏は、

「ケンが窓口なんだろう?まだ契約書も送って来てないじゃないか。当然、そんなサインはしていない」と寝耳に水だという。

頭を抱えたのはラルフ氏。一体どちらと契約していいのかわからないと困惑することしきりだった。誰が書いたのかはうっすらわかっていたが、チャッチャイや青島氏を含めた関係者全員で話し合った結果、何とかラルフ氏を説得。無事マッチメイクが成立した。

選手がはっきりとジムに所属し、マネジメントもジムが行なっている日本ではありえないひと騒動だったが、海外ではまれにこういうことがあるのだという。所属やマネジメントが曖昧なまま、なし崩しに試合が成立してしまうこともあるそうだ。またひとつ、いい勉強になった。

そうこうしているうちに、Yukoジムから元OPBF(東洋太平洋)アトム級チャンピオン、葉月さなの相手のマッチメイクの依頼。青島氏に協力いただき、タイ在住のフィリピン人プロモーター、ブリコ氏の選手を手配することができた。4戦全勝(2KO)の若手だという。ビデオを見てもセンスがありそうないい選手だった。沖縄でのマナット戦の汚名挽回に期待がかかる。

ヨードモンコンやノックアウトの為に早くタイへ行きたかったが、書類作成や、相手プロモーションとのやり取りの為、忙殺され、2月28日行きの航空チケットしか取れなかった。焦って契約に不備でもあったら元も子もない。新米の国際マッチメイカーは、とにかく丁寧に仕事を続けるしかなかった。

もたつきながらも何とかすべての契約がまとまったところでまた一難。ゴンファーのセコンドでフィリピンに行く予定だったチャッチャイが、アメリカに出張トレーナーとして渡米することになったというから、さあ大変。選手のゴンファーどころかジムのタイ人たちは、誰一人英語が話せない。トレーナーのワシムもビザの更新が難航しているとのことで同行はできないという。ダメ元で、ベトナム系オーストラリア人の選手、フン君にお願いすると、快く了承してくれた。

「お安い御用ですよ。そのかわりケンさん、次回タイに来た時には、タイ人ばかり構ってないで、僕にもみっちり指導してくださいね」

本当に、今回は冷や汗のかきどおしだった。

フン君、ありがとう。

ヤンのマネージャー、ウォンにも試合成立を電話で報告。ノンタイトル戦の予定だったが、WBOオリエンタル・ユースのタイトルマッチに変更になったと伝えると、

「ありがとうございます。精一杯頑張ります」

と、力強い必勝宣言。

8戦全勝(6KO)のフランシスコ対5戦全勝(2KO)のヤン。無敗同士の熱い激闘を期待したい。

ヘトヘトの状態で、2月28日、福岡国際空港からバンコク、ドンムアン空港へ向かう。疲れがたまっていたのか、機内では一度も目覚めることなく熟睡してしまった。

空港を出て、いつもの一服。きれいな青空から照り付けるギラギラした日差しが気持ちいい。タクシーを停め、インタマラ47にある、ワタナ・ホテルにチェックインした。

まずはプールでひと泳ぎ。そんなに広くはないが、よく手入れされた小奇麗なプールだった。

喫煙可の部屋な上、一階にはコンビニもレストランもある。ずいぶん快適な滞在になりそうだ。

ひとしきりリラックスしたところで、青島氏とプラディパッドのレストラン、キャンピング・グラウンドで待ち合わせ。本当ならもう一日早く来たかったが、27日のフライトだと、航空チケットがかなりの高額だったため、仕方なく一日遅れの青島氏の誕生会となった。

今回のひと悶着の苦労を笑いあった後、今後も起こるかもしれない今回のトラブルを教訓として、次回からはスマートに対処できるよう、善後策を話し合った。

昔、何かの本で読んだことがある。

一流は失敗から学ぶ

二流は同じ失敗をしない

三流は失敗したことにすら気づかない

一流を目指すと言いたいところだが、まだまだそんな器じゃない。まずは完璧な二流を目指して今の自分にできることを確実にやっていきたい。

そうすれば、少しはマシになっていけると信じて、前を向いて頑張ろう。