ベストパンチ1
1983年9月6日 東京 後楽園ホール
日本Jバンタム級タイトルマッチ
チャンピオン ジャッカル丸山(国際)TKO6R 挑戦者 1位 関博之(帝拳)
青森県三厩から上京。23歳と遅いデビューだったこともあり、所属ジムからそれほど多くの期待もされず、引退を危ぶまれるほどの拳の負傷にも見舞われながらも、ガッツと努力で日本王者にまでコツコツとたどり着いた雑草ファイター、ジャッカル丸山対輝かしいアマチュア実績を引っさげて鳴り物入りでデビュー。連戦連勝で日本1位まで駆け上がってきた俊才関博之の語り草の1戦。
両者は1983年3月4日にも対戦しており、倒し倒されの激闘の末、関の目の負傷による大量流血のため6ラウンドTKOでジャッカルに凱歌が上がっていた。しかし、この関の敗戦はあくまで負傷による不運なものと見る向きが多く、再戦すれば今度こそ関が老兵に引導を渡すだろうと見られていた。
迎えた第2戦。1ラウンドいきなり飛び込んだジャッカルの無骨な右フックで関がダウン。立ち上がった関のダメージは浅く、早期決着を狙ってラッシュを仕掛けに来たジャッカルに必殺の右カウンターをヒット。お返しのダウンを奪う。
2ラウンド。体がほぐれた関が得意の右ストレートでダウンを奪う。立ち上がったジャッカルにまたも右カウンターでダウンを追加。後1回ダウンを奪えばKO勝ちというところでジャッカルが怒涛の反撃。執念のラッシュで関からダウンを奪い返す。死闘の匂いが漂ってきた。
3ラウンド。関のダメージは深く、勝負を決めにきたジャッカルの猛攻に耐える。「何も覚えていない状態」でロープに詰まりかけたとき、とどめの一撃、右フックを振るってきたジャッカルのアゴに今回のベストパンチ、関の右ショートカウンターが一閃。
前のめりに顔面から沈んだジャッカル。
現在ならこの瞬間、レフェリーは試合をストップするだろう。
足を痙攣させながら立ち上がったジャッカルはこの後なりふり構わず左右のパンチを振るい続け、前回と同じ6Rに防戦一方となった関をTKO。またもエリートホープの高い壁として立ちはだかった。
その後、2度タイトルマッチに挑むものの王座には手が届かなかった関。しかし、30年経っても色褪せることのないあの右カウンターは人々の心に深く残っている。
現在、福岡県でボクシングジムを主宰。「無冠の帝王」関博之は今日も元気に弟子の指導に励んでいる。