拳を固めてサワディカップ4-3

FB_IMG_161914546450311月27日、疲れていたのか、昼前まで熟睡。寝すぎたので、ホテルの近所を散策。スクンビット通りを東に向かう。プロンポン、エカマイを過ぎて、プラカノンまで歩いた。大通り脇の歩道では無数の屋台があり、地元の人々で賑わっている。小腹がすいたので、どこに入ろうか迷っていると、ぶっかけ飯の屋台のおばちゃんと目が合い、おいでおいでをされ入店。50Bのガパオが美味しかった。

トンロー駅前のホテル内で旅行代理店を営むトランスジェンダーの浅井くんを訪ねる。こじんまりとした事務所だったが、これからファッション関係の事業にも手を広げるんだと張り切っていた。彼が企画する旅行ツアーに、ムエタイやボクシングジムでのレッスンツアーを組み込みたいから、協力してくれないかと相談を受ける。美味しいコーヒーをごちそうになりながら、いくつかのジムを紹介することを約束して彼の事務所を後にした。

BTSと地下鉄を乗り継ぎ、ファランポーン駅へ。15分ほど歩き、ジュライサークルへ着いた。

このロータリーにはかつてジュライホテルという、沈没日本人や薬物やアルコールでダメになってしまった日本人たちの巣窟があった。今は閉鎖となってしまったが、こうしてホテル前の段差に腰掛けていると、バンコクの右も左も分からない若い頃、このあたりの売春婦たちにからかわれながら、ジュライホテル前の屋台で5B(20円)程のイカ焼きや焼き鳥で貧しい食事をしていたのを思い出す。いつもの顔ぶれの、薬物売人兼売春婦のポムや客に色目を使いまくる洗濯係のオワン、お客や仲間を平気で警察に売り渡す、伊東四朗にそっくりなジュライホテルの管理人や、廃人になってしまった日本人たちの顔が浮かぶ。みんなデタラメな人たちだったが、

「若いのにこんな所にいちゃいけない。前を向くんだ。我々みたいに下を向いちゃいけないよ」

と、みんな優しかった。あの頃のほとんどの人はもうこの世にいないだろう。前を向いて頑張ろう。

 

サパンクワイで青島親子と待ち合わせ、13コインジムへ向かう。小規模ホテルをいくつも経営する実業家がオーナーのジムだが、ジム自体は実に原始的な造りだった。あずま屋のように屋根はあるが壁はなく、年季の入ったリングに無数のサンドバッグ。ハングリーを絵に書いたようなジムだった。

ジムに着くと、ちょうど木村チャンピオンと有吉会長が練習を始めるところだった。サウスポーのパートナーと6ラウンズのスパーリングをした後、有吉会長とのミット打ち。これがすごかった。1ラウンド5分のミット打ちを延々と繰り返す。加えて、その手数が尋常じゃない。木村選手のスタミナが無尽蔵な訳がよくわかった。中国のスーパースター、ゾウ・シミンをマシンガンのような連打でノックアウトしてWBOフライ級タイトルを強奪、一躍シンデレラボーイになった時のように、今回の防衛戦も、元オリンピアンの挑戦者、五十嵐俊幸(帝拳)のテクニックを馬力で押しつぶす作戦なのだろう。練習後、30分ほど談笑し、激励の握手をして別れた。

 

ホテルに戻り、深夜便での帰国に備え、チェックアウトすると、管理人が夕飯に誘ってくれた。一昨日と同じ、一階のオープンテラスで、彼お手製の鍋料理をごちそうになり、ビールで乾杯した。

 

今回が今年最後の訪タイになるだろう。

大好きなバンコクの夕焼け空を見上げながら、名残惜しさを感じた。