拳を固めてサワディカップ6-1

FB_IMG_16231268854862018年5月18日、福岡空港からTG645便でバンコク・スワンナプーム国際空港へ向かう。

チャッチャイがまたジムを移転するという。

最近、彼からジム経営の相談をされていて、いくつかアドバイスをした。ボクシング人口が減ってきている昨今、日本でも底辺拡大に力を入れている。チャッチャイの所も少数精鋭にこだわらず、フィットネス志向の女性会員獲得やキッズ育成に力を入れてはどうか、と助言したところ、スポンサーに掛け合い、ラッサワイ市場に隣接する大きなテナントへの移転のOKが出たらしい。立地は申し分ない。バンコク北郊外のパトゥンタニはバンコク中心部に比べ家賃や物価も安く、ボクサーたちの通いも楽な上に、市場に来る主婦たちも買い物中、託児所代わりに子供を預けられるというメリットもある。早速たくさんの新規会員が増えて活気に溢れているから、ぜひ見に来てくれということだった。

 

14:00、前回と同じ、ナナ駅近くのウォラブリホテルにチェックイン。屋上のプールでひと泳ぎする。機内で熟睡できたため、今回は移動の疲れもなく、1時間しっかり泳いだ。シャワーを浴びてから、遅い昼食をとるため近所を散歩する。1時間ほど歩いたところで名物のスコール。あわてて目についたオープンバーに入った。

ガランとした店内には客よりも多いウエイトレスがヒマそうにグダグダしている。ビールを注文すると、たった一杯のビールを5人のウエイトレスが運んできた。嫌な予感は的中し、真っ昼間からの酒盛りが始まった。今日は特に用事もないからまぁいいか。ウエイトレスたちとみんなでビールからバーボン、最後はテキーラまであおりながらくだらない話に花が咲き楽しい時間だった。ヨロヨロとホテルに戻り早めに就寝。

 

5月19日、目覚めはいい。ホテル前の屋台に行き、1本10B(30円)の焼き鳥を買い込んで部屋で朝食。びっくりするほど美味しかった。プールで1時間泳ぎ、体が目覚めたところでタクシーを呼ぶ。

行き先はランシットのワークポイントスタジオ。ここはテレビ番組などを収録するスタジオで、今日、月に一回のボクシング番組、WPボクシングの興行があるという。タイでは屋外の興行しか見たことがなかったから、ぜひ見てみたいと思っていた。

パホンヨーティン通りをまっすぐ北上、1時間ほどでワークポイントスタジオに着いた。のどかな田舎地帯に不釣り合いな立派なビルが建っている。入り口には100人ほどの行列。タイの興行は基本チケットなどなく、無料で観戦できる。大口スポンサーがついているため、ゲート収入を当てにする必要がない。

スタジオに入ると客席は300程度。テレビ番組のスタジオ観覧といったところか。開始20分前にはすでに満席。番組スタッフが観覧客に向かって「拍手は大きく」「ラウンド中は大きな声で応援して盛り上げて」など、テレビ映えする様に細かい指示を出していた。スタジオ自体はこじんまりとはしているが、彩り鮮やかなライトアップに驚いた。日本では世界戦でもないと、ここまでの演出はしないだろう。さすがテレビ局。狭いのが功を奏し、スタジオ一体となった異常な盛り上がりが新鮮だった。

試合は無名の若手ばかりだったが、KO賞がかかっていたため、どの選手も1ラウンドから倒しに行くボクシングで観客や視聴者を飽きさせない激闘ばかりだった。明日のチャンピオンを夢見る元気いっぱいのファイトは見ていて楽しかった。が、同時に職業柄、興行の仕組みに目がいって仕方ない。

お金を出すスポンサー、戦うボクサー、戦わせるトレーナーやセコンド、演出の技術者たち、そして主催者然としているプロモーター。持ち場持ち場が実にはっきりしていてそれぞれがプロとして己の仕事をきっちりとこなしていた。イベントの大小は関係なく、実に完成度の高い興行でとても勉強になった。これが「大会」と「興行」の差なのだと。

 

試合後、喫煙所でタバコを吸っていると、放送席で試合の解説をしていたティーという男が声をかけてきた。私のFACEBOOKを見ていたらしく、私が度々バンコクに来ているのを知っていて、いつか会えるのを楽しみにしていてくれたという。ひとしきりボクシング談義をしたあとで、タクシーを拾いたいと言うと、「田舎のほうでは外国人は乗せてもらいにくい」とのことで、局のハイヤーを手配してくれた。感謝。