拳を固めてサワディカップ7-1

福岡で食堂を営む友人、タイ人のソムさんに相談に行った。

FACEBOOKの友人、パトゥンタニでジムを主宰するビーさんのお父上が亡くなったという。8月に再び訪タイする予定だったので、タイにも香典の習慣はあるのか尋ねた。ソムさん曰く、タンブンというお布施のシステムがある。そんなに高額でなくてもいいから、包んで行くと喜ばれるよ、とアドバイスをいただいた。

 

2018年8月1日、15:30、2ヶ月ぶりにバンコクに着いた。イミグレーションは長蛇の列で、入国までに1時間半もかかり、ここ最近の疲れもあって、すぐにタクシーに乗る気がせず、空港内のラウンジでひと休みしてビールタイム。腰が重く、意を決してタクシーに乗り込んだのは夕方になってしまった。

スティサン駅近くのLAタワーホテルに向かうが、タクシーの運転手が道に迷い、一向に着かない。こちらもスマホのナビで道順を案内するが、ホテルは路地裏にある上に、行き止まりの道路が多く、なかなか要領を得ない。

日もとっぷり暮れた20:00、やっとの思いで着いたが、フロントに行くと、あなたの予約はないと言う。もちろん空室もなし。旅行予約サイトに確認の連絡をするも、一向につながらない。タクシーの中でナビを見すぎたおかげで、スマホのバッテリーは10%ほど。

大志君に連絡したが、今、日本に来ていて、すぐに力になるのは難しいという。

「まずはマクドナルドに行き、スマホの充電をして、連絡を取れるようにしておいてください。その間に、宿の確保をしてみますから」

とのことだった。ラチャダビセーク通りまで歩くと、ソイ17の入り口にマクドナルドがあった。スマホの充電が確保でき、まずはひと安心。

 

あちこちのホテルに問い合わせをするが、当日のチェックインは難しいという。最悪、ゲストハウスという手もあるが、今回大金をキャッシュで持ってきているため、できれば避けたい。ダメ元で、前回泊まったウォラブリホテルのスタッフのタオ君に連絡を取ると、

「予備のリザーブルームがあるから安心してください。今から迎えに行きます。スティサンのマクドナルドですね」

まさに地獄に仏。大志君に無事解決を伝え、猛スピードで到着してくれたタオ君の運転でホテルに着いた。

後でわかったが、旅行予約サイトの手違いだったらしい。お二方、お騒がせしました。ホントにありがとう。

 

8月2日、朝からプールで1時間ほど泳ぎ、ホテル前のレストランで朝食。カオマンガイが美味しかった。タイマッサージで疲れが取れたところで、ビーさんに電話。場所を確認し、15:00に彼のジムに行くことになった。

1時間ほどタクシーに揺られて着いたのは、パトゥンタニの閑静な住宅街。こんなところにジムがあるのかと思っていたら、その住宅街の中でもひときわ立派な豪邸に併設したTジムはあった。タクシーが到着すると、

「こんにちは!お待ちしてました。はじめまして!」

と流暢な日本語でビーさんがにこやかに迎えてくれた。

彼は若い頃、実業団選手として北海道に数年住んでいたことがある元アマチュアチャンピオンで、引退後、この自宅脇にジムを開き、後進の指導にあたっているという。

練習着に着替え、ビーさんと一緒に汗を流し、彼の構えるミットに何十発もパンチを撃ち込んだ。

さすが元アマチュアのチャンピオン、サウスポースタイルで構えるミットの距離感が実にリアルで実践的だったし、「こんなに強い左フックは受けたことがない」とお世辞も上手だった。

練習後、香典のタンブンを渡し、仏前に手を合わせた後、隣の自宅でビールをごちそうになる。素敵な奥さんと可愛らしい娘さん達を紹介された。彼女たちは日本からの唐突な珍客に驚きながらも、

「噂は聞いてます。よく来てくれました。今後ともよろしくね」と歓迎してくれた。

同じボクシングの指導者であり、加えて彼の日本語が達者すぎるせいか、初対面な気がしない。お互い熱くなり、ボクシング理論や指導方法などを語り合い、とても勉強になった。パンチの打ち方やディフェンスのスタイルなどは、国によって千差万別なのだと改めて実感した。お互いがお互いのいいところを取り入れ、指導のレベルを上げ、いい選手を作れるよう、気を抜くことなく頑張りたい。2時間たっぷりのボクシング談義の後、今後の友好と再会を約束してジムを後にした。