拳を固めてサワディカップ7-2

8月3日、9:00起床。朝食前に屋上プールで泳いでいると、ホテル従業員のタオ君がやってきて、チャン・ビールをごちそうしてくれた。昨日、ホントに助かったんだから、前回の失態のことはもう気にしなくてもいいのに。今日は日差しが強く、プール&日光浴がホントに気持ちがいい。

夕方までは予定がないので、のんびりと過ごそうと思っていたら、筑豊ジムのSマネージャーから電話。以前から頼まれていた9月9日の興行のマッチメイクの相談だった。宮崎のUマネージャーに連絡を取り、選手出場の確約を取り付け、条件を詰める。折返しSマネージャーに報告し、なんとか間に合った。地方の興行は選手の頭数も少ないので、普段から付き合いを密にして、各ジムの選手の出場OKの融通を利かせていただく関係を作っていなければいけない。今回のマッチメイク成立、皆様に感謝いたします。今後とも宜しくお願いいたします。

 

仕事が完了すると、もう昼過ぎ。あてもないことをしてみたくて、乗ったことのない赤バスに乗ってみる。いくつかあるバスの中でも最も運賃の安いバスで、エアコンもなく、細かい案内もない。行けるところまで行ってみようと思い、乗り込んだ。蒸し暑い二人がけの座席に座っていると小さな娘さんを抱いたお母さんが隣に座ってきた。クリクリとした大きな目の可愛い女の子が、顔立ちの違うオジサンが珍しいのか、ずっと話しかけてくる。歌が好きな娘のようで、タイの童謡のようなものを何度も一緒に歌わされ、すっかり覚えてしまった。

 

バスはカオサンに着いた。かつてのバックパッカーの聖地は、もはやタイというより多国籍街でしかなかった。自撮りでウロウロするyoutuberが邪魔で仕方がない。ご機嫌そうな日本人自撮り君から「お!日本人っすか?」と聞かれても「マイ カウシャイ」とタイ人のふりをしてやり過ごす。昔泊まったことのあるゲストハウスを訪ねたが、残念なことに閉鎖していた。かつてのゲストハウスの建物の入口階段に座り、ここで金もなくコーラで腹をいっぱいにしていた20代を思い出した。

 

バンコク在住の旧知の友人、小田さんから、

「今日、アソークで、MEXTREMEという格闘技イベントがあるんですがどうですか」

とお誘いいただいた。二つ返事で了承。夕方アソーク駅で待ち合わせる。

 

アソーク駅から歩いて10分ほど、GMM Grammy Placeに着いた。

以前行ったことのあるWorkpoint Studioのような収録スタジオのようだ。テレビ生中継らしく、演出効果が素晴らしい。

リングサイド1列目に陣取り、初めて見るムエタイをアレンジしたような新しい格闘イベントにワクワクした。

 

試合を見て驚いた。好戦的な両者が駆け引きなく攻撃のみをを応酬する。ディフェンスを知らないのか、相手の攻撃にはひたすら耐える。素手のような薄いグローブで、どちらかが意識がなくなるまでひたすら殴り合い蹴り合う。戦いの原点を見るようだった。レフェリーもすごい。ダウンして本能だけで朦朧と立ち上がる選手の目を見ずに、ファイトを続行させる。観客は大興奮。事故が起きないことを祈る。

ひとりだけ気になった、チャイチャナという選手がいた。ボクシング技術があり、「避けて打つ」をやっている選手だった。帰り際にバッタリ出くわしたときに、

「NICE FIGHT]と声をかけると、

「あなたのことを知っています。いつか、ボクシングで僕を使ってください」

と切り傷だらけのひどい顔で笑っていた。

 

小田さんとスクンビットで夕食。日本食の店に招待いただいた。少しずつではあるが、こうしてタイ人やタイに造詣の深い方々と親しくしていただけるのを幸運に思う。日本では食べられないレバ刺しに舌鼓を打ちながら、ボクシング談義に花が咲き楽しい夜になった。