拳を固めてサワディカップ14-1

2019年8月15日6:45、台風接近により、どうなるかわからない今日のフライト。電話やサイト情報でははっきりしないので、一応、支度をして福岡国際空港へ。7:30のエアアジアは無事出航したが、運悪く次便の8:00発のタイ・ライオン・エアSL315便は欠航になってしまった。

起きてしまったものは仕方がない。空港カウンターで翌日の便に振り替え。清川の事務所へ行き、前倒しで仕事を片付ける。

翌16日、気を取り直して福岡国際空港へ。滞在が1日短くなるのはツラいところだが、振替の便はいつものボーイング機ではなくエアバス。充電器も完備してあり、いつもよりも快適なフライトだった。

13:30ドンムアン空港に到着。いつもの喫煙所で一服した後、タクシーを拾う。今回の宿はスティサン駅近くのインタマラにあるバンコク68ホテル。小綺麗なホテルだったが、部屋は異常に狭く、陽当たり最悪。荷物を置いて、早速屋上プールで泳ぐ。本来なら明日開催されるWPボクシングの前日計量にワークポイントスタジオで立ち会う予定だったが、いまからでは間に合わない。今日は1日のんびりすることにしよう。

 

散歩がてら、フワイクワン市場で買い物を済ませた後、カフェでくつろいでいると、チャッチャイから電話。軽量級揃いのタイには珍しい中量級のサウスポーのボクサーを手に入れたから、見に来ないか、との誘い。タクシーでラムルッカへ向かう。

サーサクンジムに着くと、リングの位置を変え、使いやすく模様替えをしていた。チャッチャイと再会の握手をして、コーラで乾杯していると、ひと際背の高い、スタイリッシュなサウスポーのボクサーが豪快にサンドバッグを叩き始めた。やはり軽量級のパンチとは迫力が違う。ひとしきり彼の練習を眺めていると、チャッチャイが彼の傍に行き、何やら話し込んだ後、私のところに連れてきた。

私の足元にひざまづき、ワイ(合掌)で挨拶するこの選手は、タナントーン・スワンナサーム、ニックネームはコーラという。一日に何本もコカ・コーラを飲むからこのあだ名になったそうだ。少しアゴが長くしゃくれているのが気になったが、なかなか精悍な顔つきをしている。

 

「コーラはまだきちんとした指導を受けていない。ムエタイ時代も我流でやっていたみたいだから、基本を一通り教えてやってくれないか。今秋、バンコクでデビューさせようと思う。筋が良ければ二人で大事に育てよう」

とチャッチャイから頼まれた。

まずリングに上げ、3ラウンドシャドーボクシングをさせてみた。バランスが悪く、連打が打てない。一発はありそうだが、このアゴでは中量級の打ち合いには耐えられないだろう。

上半身のリズムのとり方や前後のステップという、基本中の基本から指導する。体も硬い。打っては避け、避けては打つ、攻防一体のリズムを教えるが、覚えは良くない。ミットを持ち1時間みっちりボクシングのイロハを教え込んだ。時間はかかりそうだが、アドバイスを聞くその目が真剣なのが気に入った。短い期間だが、毎日指導に通うことにしよう。

「どうだった?」と聞くチャッチャイに、

「現時点ではお話にならないと思う。ただリーチもあるしパンチも強い。私の帰国後も、彼にサーマート・パヤカルーン(元WBCスーパーバンタム級王者)やソット・チタラダ(元WBCフライ級王者)のようなスピードのあるテクニシャンの動画をたくさん見せておいてほしい。彼のボクシング観を変えるところから始めよう。くれぐれも一発屋のような練習をしないように気をつけて」

とアドバイスした。

ジムの景気はどうかと尋ねると、

「最近はキッズ教室の評判がよく、会員もだいぶ増えてきたので安定している。ただしローカルなエリアで物価が安いため、会費も安く、儲かるというところまではいかないが」、と苦笑い。

「焦らずに頑張ろう。ボクシングに対して真摯に向き合っていれば、必ず結果は出るはずだ。目先の金に色気を出して商売人になっちゃいけない。我々はあくまで指導者でありプロモーターなんだから」

そう言うと、

「よくわかった。根気よく頑張るつもりでいる。いつか必ずチャンピオンをふたりで作ろう」

と、爽やかな笑顔でサムアップした。

 

夕食を取りにシーロムへ。スリウォン通りの歩道にある屋台でガパオ・ライス35B(110円)。のけぞるほどの激辛で、1皿完食するのに、ペットボトルの水が3本必要だった。食事後、タニヤのバー、リスペクトンに行き、焼酎を飲みながら、常連客と1時間ほどダーツ対決。久しぶりのダーツだったので、散々な目にあってしまった。

ホテルに戻り、狭いベッドで横になる。

明日のWPボクシングはWBCアジア・ライトフライ級チャンピオン、ポンサクレック・ナコンルアンプロモーションがメインだ。世界を目指すポンサクレックの仕上がりが楽しみだ。