拳を固めてサワディカップ15-2

9月13日、9時起床。ホテル前の屋台でソムタム(パパイヤサラダ)とカイジャオ(タイ風オムレツ)の朝食。しめて70B(210円)。

近所を散歩していたら、ホテルから5分くらい歩いたところにムエタイジムがあった。朝練が終わったところなのだろうか、選手たちがリングの上で気持ちよさそうに昼寝をしていた。起こすのも悪いので、ジムへは入らずホテルに戻る。

ホテルの屋上プールで1時間水遊び。リクライニングでくつろいでいると、子供たちの笑い声が聞こえてきた。

シーツの洗濯係のおばちゃんたちが職場に子供を連れてきていて、目の届くところで遊ばせている。3人のかわいい子供たちは落ち着きがなく、仕事が手につかないお母さんに怒られている。おいでおいでをすると、元気に駆け寄ってきた。

こんにちは、とあいさつすると、大きな声で、
「サワディカーップ!」
と、元気よく返してくれた。全員、前歯の抜けた太陽のような笑顔だった。

恐縮するおばちゃんに「内緒ですよ」とウインクして、プールの入り口に内側から鍵をかけた。

これで誰もプールサイドには入ってこられない。

子供たちを代わる代わるプールに放り投げて、1時間ほど遊んだ。
どこの国でも子供は元気いっぱいだ。飽きることなく
「もう一回、もう一回」とせがんでくる。こちらのほうが先に疲れてしまいそうだ。

「ジュースを買っておいで、少し昼寝をしよう」と、お小遣いを渡すと、3人元気に売店へと走っていった。

みんなでジュースを飲んでゴロゴロしていると、ほどなくして子供たちはリクライニングですうすうと寝息をたて始めた。起こさないようにそっと退散。これでお母さんの仕事もはかどるだろう。

明日到着する家族を泊まらせるサービスアパートの下見に行こう。
ホテルと違い、普通のマンションだから、看板も受付電話番号もない。頼りは番地だけだ。炎天下の中、うろうろすると母親の体に障るので、場所の確認と、鍵の受け渡しの手順だけでもわかっておきたい。

地下鉄とBTS(高架鉄道)を乗り継いで、プロンポンへ。民泊サイトに記載されている地図を頼りに歩いていくが、目的地には廃墟があるのみ。LINEでオーナーに電話をかけ、確認すると、やはり記載ミスだったようだ。

ソイ36に戻り、数分歩くと下手なホテルよりもきれいな新築マンションが姿を現した。

管理人を訪ねていくと、
「今日は宿泊客がいるので、部屋の案内はできません。明日、また管理室を訪ねてください」
という。

まぁ、場所が分かっただけで良しとしようか。これで明日は迷うことなくスムーズにチェックインできるはずだ。

プロンポン駅に戻り、駅前にあるモール、エムクオーティエのカフェで一休み。寺院巡りをしたいという母親のために、超高速Wifiを使い、スマホで寺院の場所や交通手段の段取りを調べる。

言われてみれば、これだけタイに来ているというのに、観光ガイドに載っているような寺院や名物スポットに行ったことがない。ボクシングジムと酒場しか知らない自分に苦笑いする。明日、スムーズな案内ができるように何度も何度も確認し、何とか明日のスケジュールが完成した。

ホテルに戻り、練習着を用意。タクシーを手配して、サーサクンジムへ向かう。

ジムに着くと、すでに全身汗びっしょりになっているヤン君がいた。早速、着替えて熱血指導。

驚いたことに、昨日教えたことや指摘した欠点をばっちりクリアしていた。聞けば、昨日あれから深夜まで自分の部屋で私から教わったことをおさらいしていたという。

6ラウンズ、たっぷりミットを受けて、シャドーボクシングやサンドバッグでフォームチェック。相変わらず器用ではないが、練習に取り組む姿勢には頭が下がる。何とか形にして、試合を組んであげたいものだ。

ヤン君との練習が終わるとコーラがやってきた。
いつものように、基本動作のチェックから始まり、6ラウンズのミット打ち。パンチはあるが、体がだいぶ硬い。体が硬いとパンチを受けた時のダメージの蓄積がかなり違う。選手を壊さないためにも、今日から柔軟体操を徹底して教え込もうと思う。

練習が終わり、チャッチャイとミルクティで乾杯。相変わらず、脳がしびれるほどの甘さだ。

「ペッマニーの世界戦が決まりそうだけど、どう思う?」と聞かれ、

「いい選手だけど、まだ線が細い気がする。勝ちパターンも決まっていないんじゃないか?」

そう言うと、

「確かに。どのチャンピオンに挑戦するかで結果は変わってくると思う。どうせ挑戦するなら、ワンチャンスをモノにさせてあげたい。慎重に考えてみるよ」

チャッチャイは苦い顔で激甘ミルクティを飲み干した。

タクシーに乗り、ホテルに向かっていると、以前、博多でダンサーをしていた友人、オームから電話。

「バンコクに来てるんでしょう?これから妹と食事に行くんです。一緒にどうですか」

20:00にラチャテーウィで待ち合わせることにした。

ポーチャナレストランに着くと、姉妹は先に到着していた。

再会の乾杯をして、あまり似ていない妹さんを紹介される。お父さんが陸軍の職員で、姉妹もお父さんのコネで陸軍で働いているという。もっとも、姉のオームは、派手なことが大好きで、ダンサーのお声がかかるとすぐに長期休暇を取って、海外でもどこでもアルバイトに出かける不良職員らしいが。

「真面目そうな子で安心したよ。お姉ちゃんみたいな不良になっちゃだめだよ」

妹のブーンにそう言うと大笑いしていた。

腹一杯カニ料理を楽しんだ後、カラオケがしたいという姉妹を連れて、タニヤのバー、リスペクトンへ。

日本語を勉強しているという姉妹に日本語の歌を教えながら何度も乾杯。
0:00を回りさすがにくたびれたので、もう帰ろうと言うと、

「奥さんが明日到着するんですか?久しぶりに会いたいです。食事に行くなら私たちも誘ってください」

若い子は元気がいい。