拳を固めてサワディカップ15-4
9月16日、9時起床。備え付けの洗濯機で、練習着やTシャツを洗濯。狭めのバルコニーに干してから、散歩がてら3人で朝食をとりに行く。
今日もいい天気だ。スクンビット通りまで出て、カオマンガイ屋へ入る。この辺りは少し物価が高く、カオマンガイ1皿60B(180円)。評判の店らしく、なかなかおいしかった。
部屋に戻り、広々としたリビングでビールを飲みながらゴロゴロとくつろぐ。たった1時間強で洗濯物はパリパリに乾いていた。
二度目の旅行だったせいか、母親はリラックスして楽しんでくれたようでよかった。とはいえ、たったの2泊だから少し疲れさせたかもしれない。もう少し滞在日数を多めにして、ゆっくりとあちこち回ってもよかった。もし次回連れてこれる機会があれば、思い切って長期滞在を考えてみよう。
大阪のT会長から電話。12月のマッチメイクの最終調整に入る。条件はほぼ合意したので、どうやらこのまま決まりそうだ。今後、質の高いマッチメイクをしていくために、各ジムの会長、マネージャー諸氏ともっと密に親交を深める必要がある。安定した供給をできるよう、普段から、準備の充実をさせたい。どうやら今後も、気を抜く暇はなさそうだ。ファンあってのボクシング。粗製乱造に陥らないよう、気を引き締めて頑張ろう。
今日は帰国だ。15:30、ホテルをチェックアウトして、タクシーを手配。チャッチャイが待つサーサクンジムへ向かう。
16:40、ラムルッカに到着。ジムは選手や会員であふれかえっていた。
母親と妻に気づくと、チャッチャイは指導の手を止めて、あいさつに駆け寄ってきた。1年半ぶりの再会を喜んでくれているようだ。通訳しながら談笑していると、ウルフジム会長のプームが、
「ケンさん!お久しぶりです!」
とこちらへ走ってくる。売り出し中のタノンサック・シムシーをスパーリングの出稽古に連れてきているのだという。初めて見るタノンサックは、KO率9割のハードパンチャーという触れ込みが信じられないほど、華奢な少年だった。照れくさそうにはにかむタノンサックとガッチリと握手をして、これからの活躍、楽しみにしているよと、激励した。
練習着に着替え、コーラとヤン君の指導。
コーラのボクシングにどうも覇気がない。疲れているのか、遊びに気がいっているのか、コーラのコンディションにムラがあるのが気になる。まだ駆け出しだから、ボクシングに賭ける気持ちが弱いのか、ミットを受けていてももう一つ覚悟を込めたパンチが見られない。試合までもう時間がないから、早く目を覚ましてほしい。この日も叱らずに、ほめて伸ばす指導に終始した。
一方、ヤン君の意気込みが素晴らしい。相変わらず、前日教えたことをクリアして練習に臨んでいる。聞くとやはり、深夜まで、自宅で繰り返しおさらいをしているという。こういう熱心な選手は伸びるし、教えててかわいいものだ。
今日は次のステップ。攻撃と防御を組み合わせた実践的なボクシングを徹底して教え込んだ。
ヤン君がパンチを出すと、撃ち終わりにミットでヤン君の鼻やアゴへリターンで打ち返す。最初はいいように撃たれていたが、徐々に反応していくようになる。こちらのボディブローを受けておいて、返す刀で右アッパーからの3連打。いろんなパターンの攻防をみっちりと叩き込んだ。
「今日帰国だけど、来月また会おう。今回教えたことを忘れないようにおさらいするんだよ」
練習後にそう言うと、
「わかりました。来月会えるのを楽しみにしています。ボクシングをこんなにキチンと教えてもらったのは初めてです。きつかったけど、本当に楽しかった。ありがとうございました」
ヤン君の笑顔はキラキラとまぶしかった。
タクシーを手配して、サーサクンジムを後にする。ビーさんのTジムへ18:00到着。
ビーさんと彼の奥さんに母親と妻を紹介する。特に奥さんが喜んでくれた。みんなで何度も写真撮影をした後、いつものリバーサイド・レストランへ。
チャッチャイも合流して5人で海鮮料理に舌鼓。1mほど火柱が上がるフランベの焼きエビが絶品だった。
今回の旅行日程をビーさんに話すと、
「ケンさん!なに考えてるんですか!そんな短い日程でお母さんに海外旅行させちゃ、くたびれてしまうでしょう。もっとゆっくりさせてあげないと、お母さんかわいそうですよ!」
なかなかの剣幕で叱られた。
「次はお母さんを連れてくるときはウチに泊まってもらいましょう。何日いてもらってもいいですよ。ゆっくりタイを楽しんでください」
ビーさん、ありがとう。その際はぜひよろしくお願いします。