拳を固めてサワディカップ17-2

11月29日、9:00起床。プールで泳いだ後、ホテル前の屋台でクイッティアオ(タイラーメン)とコカ・コーラの朝食。しめて50B(150円)。

昼前にタクシーを手配して、ラップラオ駅近くのバザールホテルへ。

明日デビュー戦を迎えるコーラの計量に立ち会う。

計量は一発でパスしたものの、唇はひび割れ、検診時の体温がやや高く37.0℃あった。サウナで急激に減量した影響だろう。控室の隅のベッドにコーラを寝そべらせ、1時間みっちりマッサージをする。これで少しでも疲労が抜けてくれるといいのだが。

計量後の食事にも付き添っていたかったが、時間がないので、ホテル内のレストランに連れていき、注文と会計を済ませて、ウエイターに「これ以上は食べさせないでくれ」とお願いして、ホテルを後にする。

ホテルのドアマンにお願いして、タクシーを捕まえてもらう。行き先はジョムトーンにあるシンタヴィー・ヴィレッジ広場。タクシー運転手にチップをはずみ、急いでいる旨を伝えて、ペット、ヨードモンコン、ペッマニーが出場する試合会場へ超特急で駆けつける。

現地に着くと、ちょうどチャッチャイが選手たちにバンデージを巻き始めたところだった。手分けをして3人のバンデージを巻き終え、グローブを着けたとたん、第一試合の選手、ペットの入場となる。間に合ってよかった。

第一ラウンドから対戦者のアリエス・ブエナビデス(フィリピン)がエンジン全開で飛ばしてきた。ペットは落ち着いて対応してはいるが、勢いに押されている感は否めない。

だが、心配したのは2ラウンド途中まで。スタミナが切れた挑戦者にペットは厳しいボディブローを連発し、すっかり弱ったところで左アッパーでとどめを刺し、OPBFシルバー・バンタム級タイトルを防衛した。

続くヨードモンコンはイラン人のアボルファス・アブドルマレクに難なく2ラウンドTKO勝ち。あまりのミスマッチぶりに客席から拍手さえおこらなかった。

ペッマニーは珍しく序盤から激しい攻勢をかけ、終始相手を圧倒。2ラウンドであっさりとTKO勝ちを収めた。

なぜ、55勝4敗のキャリアを誇るヨードモンコンと、この日がデビュー戦だというこのイラン人との一戦が成立してしまったのか。

ペッマニーの対戦相手に至っては、BOXREC上でも国籍、戦績ともに不明の謎の選手。この二試合は大いに疑問が残るマッチメイクだった。

勝てばいいというものではないだろう。事故防止に重きを置く私としては、腑に落ちない一戦だった。

チャッチャイと翌日のスケジュールの打ち合わせをして、この日は解散。3人の選手とお祝いの握手をしてタクシーに乗り込んだ。

ホテルに戻り、シャワーを浴びてから、1階のWHAT’S UP DOGで夕食。冷たいビールを飲み干したところで、友人のオームから電話。金欠だから夕飯をごちそうしてほしいという。

町中に出かけるのも億劫だったので、ホテルの場所を伝え、待つこと30分。オームはダンサー仲間の女の子たちを6人も連れてやってきた。

まいったな、と思ったが、大人数で食べたほうが楽しいからまぁいいか。

オーナーのティナはニヤニヤ笑いながら、

「男の人はたいへんね。高級料理ばかり出してあげるから覚悟するといいわ」

と言いながらも、半分以上のオーダーを伝票をつけずに会計してくれていた。

久しぶりの若い人との宴会は本当に楽しかった。ダンサーの女の子たちは、

「いつか日本に雪景色や桜を見に行ってみたい。航空チケットとホテルをお願いね」

とすっかりずうずうしい。

とはいえ、派手な仕事をしている割には、みんな実家への仕送りを欠かさない、家族思いのかわいらしい娘さんたちだった。

お開きになったところで、どっと疲れが出てきた。やはり若い子の相手はしんどい。タクシーに飛び乗り、サパンクワイ駅前のマッサージ屋へ。

ここのマッサージ屋のスタッフは全員男性で、力強いマッサージが売り物だ。2時間のロングコースで首肩腰の疲れもばっちり回復。

身も心もすっきりしたところで、ホテル近くのバー、WOW CAFEで飲みなおし。

生バンドの演奏をぼんやりと聞きながら、メコン・ウイスキーのソーダ割をあおり続けた。

後1か月であわただしかった2019年が終わる。

毎月タイに通い続けたこの一年は何だったのだろう。

今、振り返ると、自分の強い意志でそうしたのではなく、何か導かれるようにこうなってしまったかのように思う。

 

気持ちのいい夜風が吹いた。

テーブルの上の丸めた紙ナプキンが飛ばされ、地面を右に左に転がっていく。

 

それでいいと思った。

ゴールなんか決めずに流れに任せるのもいいと思った。

理屈や理由なんかなくてもいいと思った。